RAWファイルとJPEGファイルの間に存在する微妙な色味の違いについて下記の記事で触れました。
記事:RAW + JPEGの2種類のファイルをどうやって取りこむ? 使い分けの意味とLightroomでの使い方
また下記の記事ではRAWファイルとJPEGファイルの特徴を比較しました。
記事:RAWファイルってなに? RAWとJPEGの2つを比較 さわり編
どうしてRAWとJPEGでは色味が異なってしまうのか?さらにわかりやす事例をもとにRAWファイルとJPEGファイルの考察を行いたいと思います。
こんなことを書きます!
わかりやすいサンプル
4枚の画像が並んでいますが、2ショットのJPEGファイルとRAWファイルです。
これはOlympus Viewer3というメーカー製の現像ソフトで表示しました。JPEGとRAWを同時表示できないので、JPEG優先/RAW優先を切り替えてスクリーンショットをとりました。
アングルは同じですが、同じショットとは思えない色味だと思います。これはアートフィルターで撮影した画像のJPEGファイルとRAWファイルなのです!
アーティスティックな表現をするために、カメラ側(メーカーによっては現像ソフト側での後処理での変更も可能)で撮影した元の画像に特殊処理を加えて出力できる機能。
OM-D E-M1 MarkⅡでは14の種類に、それぞれ複数の効果が選べます。OM-D E-M10では12種類のアートフィルターがあります。
出典:https://olympus-imaging.jp/product/dslr/em1mk2/feature.html
今回の比較した画像で使ったアートフィルターはドラマチックトーンです。ドラマチックトーンはコントラストを極端に引き出し、彩度も強くするので、面白い画を作りやすいですが、現実の撮影した被写体とは大きな色味の違いがでます。それがRAWファイルと画像との違いになります。
OLYMPUS CORPORATION E-M1MarkII (7mm, f/8, 1/8 sec, ISO1600)
OLYMPUS CORPORATION E-M1MarkII (12mm, f/2.2, 1/80 sec, ISO200)
英語でRAWとは[生の]、[未加工の]という意味
英語では[RAW]とは[生の]、[未加工の]という意味です。Raw Foodとは生ものの意味になります。刺身や寿司はRaw Foodです。
RAWデータという用語は写真とは関わりのない、普通の仕事でも私は使います。データベースに記録された[生データ]という意味合いです。
それをエクセルのピボットテーブルを使ったりして、グラフィカルにしてプレゼン資料にしたりして表現します。
おや? 何か似てないですか?
RAWファイルとJPEGファイルの関係と、データベースに保存されたデータとグラフィカルなプレゼン資料との関係です。
デジタル信号にに色はない と以前書きました。そこから生成されるRAWファイルには色の情報は詰まっていますが、それをどう表現するかという情報は決まってないのです。Windows10でも表現方法を定義したものがないため、JPEGファイルと違ってRAWファイルの画像をエクスプローラーなどで表示できないのです。
ユーザー側がWB(ホワイトバランス)やら、ピクチャースタイル(キヤノン向け名称)等々の設定をカメラ側に施していて、その情報がどういう表現をするかという設定になり、それをもとにカメラの映像エンジン(パソコンでいうCPUみたいなもの)が処理をして出力したものがSDカードに書き込まれたJPEGファイルです。
主要カメラメーカーの画像エンジンの名称
- キヤノン:DIGIC
- ニコン:EXPEED
- ソニー:Bionz
- オリンパス:TruePic
そのため余分なものはそぎ落とされてJPEGはファイルサイズが小さくできます。(最小公倍数的な記録方法)
逆にどこまで必要かわからないからすべてをかき集めて記録したためファイルサイズが大きくなっているのがRAWファイルです。(最大公約数的な記録方法)
同じ画像を撮ってもRAWファイルとJPEGファイルで違いがある理由が解明できたと思いますが、その設定を極端にしたのがアートフィルターです。だからこそ、アートフィルターでのささ津瑛の場合、RAWとJPEGでの差異が大きいのです。
LightroomでRAWファイルが薄味で表現されるわけ
LightroomでもRAWファイルとJPEGファイルを同時表示すると色味が違うことはお伝えしました。
これで原因がつかめたかと思います。RAWファイルではどう表現するかの情報が定まってなく生の状態のため、どう表現をするかをソフト(Lightroom)側が定義しているのです。これは汎用ソフトであるため、カメラメーカー固有の画像エンジンとは異なるため、画像エンジンが出力したJPEGファイルと異なります。
Lightroomの現像モジュールでRAW表示
プロファイルが[Adobe Standard]になっていると思います。
[Camera Monotone/Camera Muted/Camera Natural/Camera Potrait/Camera Vivid]と変更できますが、これらはすべてAdobe社が考える味付けです。同じような表現設定(キヤノンは”ピクチャースタイル”、ニコンは”ピクチャーコントロール”、ソニーは”クリエイティブスタイル”、オリンパスは”ピクチャーモード”、ペンタックスは”カスタムイメージ”)の名前があっても、同じにはなりません。(例:Adobe社の”Portrait” と キヤノンのピクチャースタイル”ポートレイト”)
Lightroomの現像モジュールでJPEG表示
プロファイルが[埋め込み]と表示されて変更できません。つまりカメラメーカー側ですでに行った味付けがJPEGでされていて、そこの部分の変更はできないのです。
それ以外の部分[露光量など]は変更ができますが、RAWファイルに比べたらデータ量が少なく、違和感なく変更できる幅が狭いということになります。
まとめ
上記2つの画像を比較して、ヒストグラムも微妙に違うことが見てとれるでしょうか。小さくてすみませんが、微妙に違うのです。
そのためRAWだけの撮影にせず、RAW+JPEGの両方のファイルを記録するようにするのです。
- RAWファイルの記録のみ → 意図した撮影結果(JPEG)との差があり、それを比較する術がない
- JPEGファイルの記録のみ → 撮影現場で意図した撮影に近い色味が表現されるが、データ総量がRAWファイルに比べて少ないためパラメーターをいじると破綻する可能性がある
上記の2つのリスクを回避するためには両方のファイルを記録する方がよく、これが私がRAW+JPEGで記録する意図です。