下記の記事でRAWファイルとJPEGファイルの違いを解明しました。そして色味も微妙に違うことを書きました。
記事:RAWとJPEG、同じものを撮っても違う2つファイル LightroomでRAWが薄味に見える理由が見えた!
折角なのでもう少し掘り下げてみようと、今度はJPEGのことを調べてみました。
こんなことを書きます!
歴史
1994年
これはISOにおいてJPEG標準が規格書が発行された年です。1994年は私にとっても重要な年です。大学卒業の年であり、初めて就職戦線で[氷河期]という言葉が使われたと記憶しています。
調べてみると1992年11月に[就職ジャーナル]で使われだした造語らしいですが、1994年の新語・流行語大賞で審査員特選造語賞を受賞したことで1994年と記憶しているのかもしれません。この後、[超氷河期]が来るとは思いもしませんでしたし、失われた20年と呼ばれる時代が続くとも思いませんでした。。。
そんな時代背景です。それよりももっと重要なことは、Windows95が発売される前年ということです。インターネットもない、PCはWindows3.1やMS-DOSの時代(マックは高くて買えない憧れの存在)でした。
モデムという電話回線を使った貧弱なネットワークインフラしかない時代です。この後、ISDN回線というデジタル回線が出てきてスピードアップしますが、それでも今のスマホの回線スピードからしたら・・・です。また通信料金も高く、常時接続は考えられない時代でした。ISDNのテレホーダイというサービスが出て、23時からは接続料金が同一であったため、私は良く夜更かしをしてネットにつないだのはWindows95が出てからでした。
デジタル画像として考えられるのはファクシミリだったでしょうか。しかし現在のパソコンやスマホのような普及までには至らずだったと思います。
しかし!
この年がさらに重要な年と言えるのはカシオより QV-10という初めてといっても良いコンパクトデジカメの発売が発表されました。翌1995年に発売されました。
当時、友人がQV-10を所有していて、[なにこれ~]と衝撃を受けたことを思い出します。
誰もが想像しなかったと思いますがこの2つが同じ年に生を受ける準備をし始めて、それぞれ生み出された後にお互いが普及を手助けするのです。
1988年
さかのぼって1988年。JPEG(Joint Photographic Experts Group)という組織が発足して2年後、JPEGの標準変換方式としてDCT(Discrete Cosine Transform)の採用が決まった年です。
DCTは離散コサイン変換と呼ばれるデータの圧縮方式の一つ。AACやMP3の音声圧縮でも使われているらしい。
米・欧・日でそれぞれ圧縮方式が提案され、それがDTCと決まり本格的に国際標準となった年と言えます。今をさかのぼること30年前。2018年はJPEGが国際的に普及することがある程度決まった年だったのです。(あくまでも私見ですよ)
1994年当時であってもまだインターネットは普及せず、Windows95も出てない時代ですから、規格が策定された当時の課題はデータを圧縮していかに通信時間を短くするかということがあったかと推察できます。デジカメも市販されるようなものはなく、デジカメを想定したものではなかったはずです。
1995年
また戻って1995年11月23日。秋葉原で大々的にWindows95 日本語版が発売され熱狂的なフィーバーが起こっていました。
Windows95でTCP/IPというプロトコルが標準実装され、インターネットに接続するのが以前よりもだいぶ容易になり、インターネットが普及する要因になりました。
これがJPEGの普及にも一役を買ったと思っています。Webサイトではロゴなども含めグラフィカルになり、画像データがWebページに貼り付けられるようになったからです。
JPEG以外にも、GIFやBMPもWebサイトに使われました。
1999年にはGIFが特許の問題で有償ということからGIFを敬遠する動きがあり、それがJPEGの利用を加速させたり、PNGを生み出したりという副産物を生みました。
GIFはデータ圧縮にLZWというものを使っていたのですが、特許を持っていたアメリカのユニシス社が当初は利用料を請求しない方針だったにも関わらず、インターネットの普及を見てLZWの利用について利用料を請求する方針に転換したためです。その後2003年にアメリカで、2004年に日本で特許が失効したため、現在はGIFが自由に使えます。
さらにさかのぼって1995年3月、前述したQV-10が発売されました。まだメモリーカードなどはなく内蔵2MBメモリで25万画素、320×240ピクセルでした。
カメラに内蔵の液晶で画像がすぐ見れること、ケーブルで転送でパソコンで見れることは今では当たりませんですが、当時は画期的でした。しかも自撮り可能でした♪
画像フォーマットの特性
JPEGの歴史を紐解いたついでによく見る画像関連のフォーマットをまとめました。ここからもコンパクトデジカメが生まれたから、JPEGがメインで扱われるようになる理由がわかります。
当時数メガバイト単位での記憶容量で、色数が必要なところからGIFはなく、JPEGが一番フィットしたと思います。(TFI形式で保存できるものもありましたが)
JPG | GIF | PNG | TIF | BMP | |
色数 | 24Bit フルカラー1670万色 |
モノクロ2諧調 8ビットカラー 256色 |
48bitカラー24Bit フルカラー1670万色 |
色に関する制約がほとんどない | モノクロ2諧調 24Bit フルカラー1670万色 |
色空間 | RGB、CMYK YCbCr, グレースケール |
RGB | RGB、 グレースケール |
RGB、CMYK, YCbCr, |
RGB |
圧縮 | 非可逆圧縮 | 可逆圧縮 | 可逆圧縮 | 非圧縮、各種圧縮が使用可能 | 圧縮されてない大きな画像サイズ |
ファイル容量 | 圧縮率を上げれば容量は小さくできるが劣化度合いは大きくなる | 256色のため小さい。 | 比較的小さいがJPEGよりは大きくなる傾向 | 大きい | 大きい |
画質劣化 | あり | 色数が同じならなし | なし | なし | なし |
用途 | 写真、色数の多い画像 | ロゴなど色数が少ないものに適する | 写真かつ背景透過を実現したい場合 | 解像度の高い画像、写真 | 解像度の高い画像、 |
苦手用途 | ロゴ、イラスト | 写真 | 印刷、データ転送 | データ転送 | 印刷、データ転送 |
JPEGフォーマットの特性
BMPそしてGIFとフォーマットが生まれて、その次に規格されたのがこのJPEG形式です。
BMPでは非圧縮で容量が大きすぎ、GIFでは色数が256色と少なすぎであり、その間を補完できるフォーマット形式と言えます。「写真」や「CG」など色を多用する画像でも、その色を(見える範囲で残しつつ)鮮明に記録しながら容量も少なくできるものとして開発されました。
- 非可逆圧縮のため、圧縮後は元の画像データに戻せない
- 圧縮率を指定でき、高圧縮だとサイズは小さいが劣化が大きくなり、低圧縮だとサイズはあまり小さくならないが劣化が少ない
- 24bitフルカラーまでサポートでき、1670万色の表現が可能(正確には16,777,216=2の24乗色)
- RGBとCMYKをサポート
- 透過は不可
ここからデジカメのJPEGデータの保存形式にFine(あるいはLarge FineやSuper Fine)やSmallがあるのがうなずけます。高圧縮か、低圧縮かを示しているわかりやすい例です。
JPEGフォーマットの苦手な部分
急激な色の変化があるような画像(ロゴやイラスト)
→隣り合わせの色を均一化しようとしてブロックノイズが出ることがある
→逆にGIFが得意とする領域で、JPEGはなだらかに色が展開するものが得意(写真に適する理由)
色と色の境目、エッジのノイズ
→高圧縮で保存した場合など、境界線や色の変化が激しい部分で起こる画像の乱れで見栄えが悪くなる。いわゆるモスキートノイズ。
歴史の必然か?JPEGはデジカメのために生まれたようであり、デジカメはJPEGのために生まれたようでもあります。